HPF2021

HPF2021(大阪府高校演劇祭)の観劇レポートのブログです。

淀川工科高校「この1億円どうしよう」 観劇レポート

淀川工科高校さんの「この1億円どうしよう」を観劇させていただきました。

どのように話が展開していくのかと思いつつ、お芝居が始まるとすぐに世界観に引き込まれました。冒頭から役者さんたちのコミカルな演技、絶妙なテンポでが繰り広げられるセリフの掛け合いで思わず笑いが出てきてしまうようなシーンも多く、わくわくしながら観ることができました。

ベンチに置かれている1億円、これを発見し自分たちの物にしようとする田中と佐藤、子どもが誘拐されていてこれは身代金だと言う専業主婦、娘の整形手術の費用だと言う山田。なにが本当でなにが嘘なのか。なにを信じてなにを疑えばいいのか。嘘が暴かれていく流れは観ている側もハラハラしました。

また序盤のコミカルな演技とは打って変わって、結末にかけてのシリアスな演技も魅力的でした。

1億円の札束や銃などはパントで表現されていたのですが、役者さん1人1人がパントでも重みを感じながら演技していたり、恐怖、怒り、悲しみなどを繊細な体や顔の動きで表現していたと思います。そのようにリアリティ溢れるこのお芝居の中に、特に専業主婦の大切なものを失うことで殺人鬼となってしまう姿はなんとも言えない、複雑な気持ちを感じました。

そしてこのお芝居のラスト、田中のその直前までに起こった全てが走馬灯のように流れるシーンの演出がとても印象に残りました。

経験がないことを演技する、とゆうことは難しいことだったと思うのですが、淀川工科高校さんは、今起きた出来事をありのまま、写実的に「経験」し、人間の欲や恨み、寂しさや生きたいと思う心などをいい意味で生々しく演じられていたと思います。

とても素敵な舞台で楽しく観劇させていただきました。

淀川工科高校の皆さん、お疲れ様でした。

金蘭会高校 3年 岩野七葉、2年 栗原輝